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「第三者割当増資」の意味を徹底解明!メリットはなに?
「第三者割当増資」という言葉を聞いたことがありますか?これは企業が自己資本をアップさせるための方法で、株主でない人に新株を購入する権利を与えることです。しかし「株主でない人に新株を購入してもらう」とは、一体どういうことなのでしょうか?ちょっとお堅い話題ながら、普通に株を売る行為と違って、企業にどのようなメリットがあるのかも含め、第三者割当増資についてご解説!
第三者割当増資ってなに?
まず、第三者割当増資の意味について詳しくご説明しましょう。
第三者割当増資とは「株主以外の誰かに新株を割り当て、資金を調達すること」です。
M&A(企業が買収によって合併されること)の手段としても用いられますが、基本的には資金調達したい企業が、有効的な関係を結んでいる会社に持ち掛けることが多いとのこと。
普通に証券取引所で株を売ればいいんじゃない?と思ってしまいますが、株式会社ではあるものの上場していない(株券を取引所で公開していない)企業であれば株主を増やすのは難しいですし、上場していても株価が下がりすぎて売れない……という場合もあります。
ですから、親しい取引先や自社の役員などと「第三者割当増資」を行い、資金を増やす必要があるのです。
第三者割当増資は「第三者に新株を発行して資金を得る」こと!
第三者割当増資とは、企業が外部から資金を調達する時の手段のひとつです。ある特定の第三者に対して新株を発行して資金調達を行うもので、株券を新たに発行して出資を引き受けてくれる相手先に割り当てて、その見返りに資金を受け取ります。「増資」というくらいですから資本金の増加を伴います。
「未上場の企業」で行われることが多い!
上場企業の場合、新株の発行を伴う資金調達の方法としては、公募増資の方が一般的に用いられています。公募増資は上場企業が公募、つまり不特定多数の出資者を公けに広く募り、新たな株主より資本の払い込みを受けて資金調達の目的を果たすものです。
しかし未上場企業の場合は、株式を公開していないために公募増資によって資金を調達することが非常に困難です。そこで第三者割当増資が活用されることになります。
第三者は、取引先や自社の役員など「以前から縁のある」相手!
「第三者」とは、その企業と企業の株主以外の者を指しており、取引先やベンチャーキャピタル、自社の役員など、以前から縁のある特定の人物や企業が増資の相手先になることが多いようです。
M&Aの手法としても用いられる!
第三者割当増資により、対象会社が発行する株式の全部又は一部を取得し、対象会社の支配権を取得するという、M&Aの手法の1つです。
M&Aは、一般的には「買収される」というネガティブなイメージが大きいですが、最近では新規事業への参入や、より効率的な資金調達を図るため、両社が合意して積極的に行われることもあるようです。
付き合いがあれば、誰でも「第三者」になれるの?
「第三者」は、基本的に以前から付き合いのある取引先や金融機関、自社の株主、ベンチャーキャピタル(主に未上場企業に投資し、かわりに経営コンサルティングを行って企業の価値を高める投資ファンドのこと)などが選ばれることが多いです。
じゃあ、付き合いがあれば誰でも投資先として選ばれる可能性があるのか?といえば、そうではありません。
第三者割当増資は、相手方に任せる株式の割合によっては「筆頭株主」として非常に大きな権利を与えたり、業務提携や合併を行ったりする可能性もあります。
ですから、元々新規参入したい業界の企業や、今後も安定したお付き合いをしていきたい企業など、お互いに何かしらの「うまみ」があることが重要です。
こういったこともあり、第三者割当増資は別名「縁故割当増資」と呼ばれているとか。
第三者割当増資は「縁故割当増資」とも呼ばれる!
発行会社の従業員や親会社、業務提携の相手先、取引先、金融機関等、発行会社と関係のある特定の者に新株式の割り当てを受ける権利を与えて行う増資。特定の縁故者に割り当てることから「縁故割当増資」ともいう。
「友好的な関係が築けている」企業でなければならない!
相手先には、買収対象企業と友好的な企業や安定株主が選択される。
第三者として選ばれた相手は、新株を安く買える!
通常の公募増資とは異なり、特定の第三者に新株引受権を付与して新株を引き受けさせるため、市場の取引価格と比べると安く購入できることが多い。
なるほど~。
買う側にも、業務提携や筆頭株主の可能性だけでなく、新株が安く手に入るというメリットがあるのですね。
では、「売る側」に資金調達以外のメリットはないのでしょうか?
企業にとっての第三者割当増資のメリットとは!
第三者割当増資を行う企業にとっての主な目的は、新たな資金の調達や、取引先と安定した信頼関係を築くことでしたよね。
しかし、実は第三者割当増資には、他にもメリットがあるのです。
具体的には「株主との業務提携によって、ブランド力を向上できる可能性がある」ということと「資本金が大きくなることによって、企業としての信頼が上がる」ということが挙げられます。
第三者割当増資の相手として選んだ企業と、以前よりも密接な関係になることによってブランドイメージが上がれば、世間での知名度も高くなりますよね。
株主からの支援やブランド力、信用力の向上につながる!
■長期資金二―ズに有用
返済義務がないため固定資産や研究開発などに有用です。
■財務基盤強化
自己資本が充実するため財務基盤が安定します。
■株主支援
株主からの事業支援やブランド力の向上が期待できます。
■信用力向上
資本金の大きい企業は対外的に信用力が上がります。
M&Aもスムーズにできる!
最近では企業が急激に事業を拡大させたり、それまでの業務のカバー範囲を広げたりする場合、企業買収が活用されるようになりました。第三者割当増資を機に資本提携と業務提携に踏み切るようなケースでは、企業買収よりも囲い込みの度合いが緩やかなものになります。
企業買収は手続きが煩雑で、買収後も両社の間に感情的なしこりが残るケースがあります。これに対して第三者割当増資を通じた資本・業務提携では、買収ほどの大がかりな仕掛けも要らず、両社の関係を良好なものに保ちながら、お互いの技術を活用しあうことが期待できます。
M&Aの手法として用いられる場合は、「買収」という面倒な手続きを取らずに株主として実権を持たせることができるので、他の株主からも賛同が得やすく、スムーズに進みやすいそうです。
第三者割当増資にはデメリットもある!
一度に多くの資金調達ができるうえに、取引先と円滑な関係を築くことができる「第三者割当増資」は、企業にとって非常に魅力的に思えますよね。
しかし、実は気をつけるべきデメリットも存在するのです。
代表的なのは「株主の権利を侵害する恐れがある」というもの。
第三者割当増資は、新たに株主になって欲しい人に格安で株券を発行する方法ですから、既存の株主からすれば面白くありませんよね。
しかも、その株主の権威が強くなればなるほど、既に株主だった人々の権利が脅かされる恐れもあります。
そのため、第三者割当増資は、慎重にやらなければ紛争を招きかねないと言われているのです。
第三者割当増資は、株主の持分割合を大きく変化させる!
第三者割当増資の場合、株主の持分割合を大きく変化させる可能性があるため、細心の注意が必要です。特に、経営者自身の持分割合が薄まる(持分割合が少なくなってしまう)ケースでは、経営への支配権を失ってしまう可能性もあります。経営者自身の持株割合が薄まらないよう、必ず経営者自身も一定の出資をするようにしましょう。
既存株主どころか、第三者割当増資を行う相手によっては経営者の地位が脅かされる場合も……。
「有利発行」に注意!
第三者割当増資で税務上留意すべき点は、第三者割当増資による株式の発行価額が有利発行に当たると認定される場合です。
有利発行と認定されると、時価と発行価額の差額に対して、個人の場合は既存株主からの経済的利益の供与があったとして贈与税が、法人の場合は受贈益が計上されて法人税が課税される可能性があります。
第三者割当増資の手続きは「会社法」に定められている!
第三者割当増資の発行手続きは、会社法により詳細に決められています。特に新株を「特に有利な価格」で発行するときは、既存株主の利益保護の観点から、株主総会でその理由を開示して特別決議を経る必要があります。また、金商法や取引所開示規則においても、詳細な開示が求められています。
「有利発行」とは、社会的に妥当と考えられる価格より低い値段で売られることです。
有利発行と認められれば税務上の問題が発生してしまいますし、そうでなくとも安い値段で売られるのは、既存株主からすれば納得いきませんよね。
そのため、「特別決議で既存株主に、第三者割当増資を安く行う理由を開示する」と法律で決められています。
増資の方法を勉強し、今後の仕事や独立に活かそう!
いかがでしょうか?一見企業にとって非常に有利な方法に思える「第三者割当増資」ですが、実際には落とし穴もあるのですね。
この第三者割当増資以外にも、自己資本を増加させる方法(増資)は様々に存在します。
増資は、いずれ起業を考えている方や、個人事業主として頑張られている方にとってはもちろん重要な課題ですが、企業に所属している方も無関係ではありません。
資本を増加させる方法や、企業同士の関係がどのように結ばれているのかなどを勉強すれば、今後の仕事にもきっと活かされることでしょう。