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「トリクルダウン」の意味を詳しく解説!実際に可能なの?
富裕層を豊かにすることで、国全体の貧困層の生活が改善されるという「トリクルダウン」。現在の安倍政権の政策を語るときにもしばしば引き合いに出される理論ですが、この仕組みは一体どのように起こりうるのでしょうか?また、本当に可能なのでしょうか?今回は、「初めて聞いたんだけど、それってどういうこと?」と首を傾げるあなたのために、意外と知らないトリクルダウンの意味や信ぴょう性などについて、詳しくまとめてみました!これを読めば、今後の日本経済が救われる手立てが分かるかも?
「トリクルダウン」って一体なに?
トリクルダウンとは「富裕層を豊かにすることによって自然に富が下層へと滴り落ち、貧困層も改善される」という理論(仮説)。
つまり、大企業や富裕層に減税をはじめとした支援政策を行えば経済が活性化し、国民全体の利益となる、という理屈です。
これは第40代アメリカ大統領の「ロナルド・レーガン」氏が行った「レーガノミクス」という政策に代表され、昨今では安倍政権による「アベノミクス」がこの傾向にあるのではないかと示唆されることもあり、注目を集めています。
トリクルダウンが成立するためには、富裕層の「富がいずれ使用されること」「富によって充足される環境に限界があること」の2つの要因が必要とされており、誤れば格差拡大に繋がる恐れもあるため、危惧する声もある、とか。
「富裕層が豊かになれば、貧困層まで富が行きわたる」という理論!
トリクルダウン理論とは、富裕層が経済的に豊かになることで、最終的には貧困層も豊かになり、全体に富が行き渡るという理論、または仮説のこと。
「トリクルダウン」とは、「したたり落ちる」という意味で、富裕層から貧困層へ富がしたたり落ちることを意味している。
具体的には、大企業や富裕層を減税により優遇することで、富裕層らの経済活動が活性化され、最終的に貧困層を含む社会全体に富が行き渡るという理論であり、新自由主義政策などにおける根拠とされることがある。
トリクルダウンには、2つの前提が必要!
しかし、トリクルダウン理論が成立するためには、富がいずれ使用されること、富によって充足する欲求に限界があること、という2つの前提が必要であるとされ、実際にはその前提が成り立たないこと、また、トリクルダウンによって富裕層と貧困層の格差拡大につながるという負の側面も大きいことから、これを疑問視する声もある。
代表例はロナルド・レーガン氏の「レーガノミクス」
トリクルダウン理論は、新自由主義の代表的な主張の一つであり、この学説を忠実に実行したアメリカ合衆国大統領ロナルド・レーガンの経済政策、いわゆるレーガノミクス(Reaganomics)について、その批判者と支持者がともに用いた言葉でもある。
「アベノミクス」にもトリクルダウンの傾向があると指摘する声も!
経済学者の田中秀臣は「安倍政権の法人税減税・設備投資減税によって企業の余剰を生み、社員の賃金にまわすように誘導しようとする政策は『トリクルダウン政策の一つである』」と指摘している
しかし、トリクルダウンを否定する声も……
トリクルダウンは何となく理に適っているような気がしますが、実際のところは前述した通り、経済回復どころか更なる格差を生みかねないと疑問視される声もあるよう。
また、トリクルダウンを可能にするためには「富裕層が国内にお金を落とすこと」が必要なのだから、国際化が進む昨今ではあまり現実的な案ではないという考えもあります。
確かに持っているお金をどこに使うかは富裕層でもそれ以外でも個人の自由ですから、優遇するから国内で消費して経済を活性化させて下さいね!なんて規制することはできませんよね。
これに関しては、あまりにも楽観的すぎるという意見と有効であるという意見で、様々に議論が交わされているようです。
本当の意味で経済回復をもたらすのか?と疑問視する見方
トリクルダウン理論の考え方によれば、「投資の活性化により、経済全体のパイが拡大すれば、低所得層に対する配分も改善する」となるはずである。しかし、現実にはパイの拡大が見られても、それは配分の改善を伴わず、国民全体の利益としては実現されない。
つまりは「富が低所得層に向かって徐々に流れ落ち、国民全体の利益となる」はずであったものが、一部の富裕層の所得の上積みを以って「経済は回復した」ということにすりかえられているに過ぎない、というものである[要出典]。
自由に資本を使える「グローバリズム」の下では成立しない?
「トリクルダウンは、富裕層が富めば経済活動が活発になり、その富が貧しい者にも浸透するという経済論」
まあ、それはそうなのですが、正しくは「富裕層が富み、国内に投資がされる」ことで経済活動が活発になるという話なのです。
すなわち、資本の移動が自由化されたグローバリズムの下では、トリクルダウンなど成立するはずがないのです。特に、デフレーションという需要不足に悩む我が国において。
富裕層減税や法人税減税で、「富める者」の可処分所得を増やしたところで、「グローバリゼーションで~す」などとやっている状況で、国内への再投資におカネが回ると誰が保証できるのでしょう。誰もできません。
「滴り落ちるなんてあり得ない」と断言されたことも……
「アベノミクスは理論的には百%正しい」と太鼓判を押した竹中平蔵氏。アベノミクスの“キモ”であるトリクルダウンの効果が出ていない状況に対して、「滴り落ちてくるなんてないですよ。あり得ないですよ」と平然と言い放ったのである。
トリクルダウンは、先進国では成功が難しいとされる!
このように、トリクルダウンには批判の声も挙がっています。
では、本当にトリクルダウンは実現可能なのか?というと、発展途上国をはじめとして「国民の所得が全体的に低く、消費活動が国の経済にあまり関係していない場合」(あるいは国の人口そのものが少ない場合)には有効な手段であると言われているようです。
しかし、日本やアメリカ、欧州諸国など人口の規模が一定以上を超える国で、かつ国民の所得が全体的に高く、消費活動が国の経済に大きく影響を及ぼしている場合には、経済構造が複雑なため、トリクルダウンの流れがスムーズにならないのだとか。
また、前述したように自分が持っているお金をどこに使うかの自由度がより高いため、富裕層が必ず国に貢献してくれるとも限らないのですね。
トリクルダウンは、まだ発展していない国であれば有効!
トリクルダウン理論は、発展途上国のように一般市民の所得が圧倒的に少なく一般市民の消費が国内経済に大して貢献しない場合、もしくは人口が少なくて国内市場規模が小さい小国家の場合は現在も有効である。ただ、先進国や人口が一定の規模を超える国々では一般市民の消費が国内経済に大きく貢献している為、トリクルダウン理論は必ずしも有効ではない。
トリクルダウンは「前時代的な考え」?
近代国家は経済構造が複雑化しており、「富は必ず上から下へ流れる」といった単純な概念は当てはまらないのである。トリクルダウン理論は、一般市民の消費が企業を支え、経済を回し、国家を成り立たせ、「富が下から上へ流れる」という状況を想定できなかった時代の理論ともいえる。
この理論は開発途上国が経済発展する過程では効果があっても、先進国では中間層を中心とした一般大衆の消費による経済市場規模が大きいので、経済成長にはさほど有効ではなく、むしろ社会格差の拡大を招くだけという批判的見方もある。
戦後の日本においては、トリクルダウン効果があったという見方も!
第二次大戦後の日本では、所得倍増計画、日本列島改造論といった政府主導の開発政策の実施によって、総中間層と呼ばれるような所得構造に至ったことから、このトリクルダウンの効果はあったという説もある。
「アベノミクス」とも密接な関係?トリクルダウンを深く知ろう
いかがでしょうか?トリクルダウンは一見理想的な経済回復の方法のようですが、様々な否定的要因も存在するのですね。
昨今では「アベノミクス」の政策がこれに当てはまるとも言われていますが、近代の日本においては実現が難しいとされていますから、今後の動向が気になるところです。
これをきっかけに、現在日本や世界がどのような経済政策を行い、どのような将来を描いているのかを知れば、政治にも関心が高まるかもしれません。
経済の成長は私たちにも密接に関わりのあることですから、ぜひ造詣を深めてみてくださいね。