美侍

堕ちゆく少女の物語・ハマる!エログロ漫画「少女椿」の世界

世界中が注目している、日本の人気エログロ漫画「少女椿」をご存知ですか?これは一人の少女の悲しき運命を描いた、カルト漫画界の巨匠・丸尾末広の代表作なのです。あまりの過激な内容で、賛否両論を巻き起こした問題作。しかし、その世界に一歩入れば丸尾ワールドから抜けられなくなる不思議な魅力がつまった物語。『ヱヴァンゲリオン』や『ちびまる子ちゃん』にもつながる意外なエピソードなども含めて、ぜひ少し覗いて見てください。

エログロ漫画の代表作・丸尾末広の描く「少女椿」とは

今から約30年前に発売されたにも関わらず、なおカルト的な人気を誇っている日本のエログロ漫画の代表作「少女椿」。
舞台は昭和13年。
母親を亡くし、花売りで生計を立てていた少女「みどりちゃん」は、声をかけてくれた紳士を頼り辿り着いた場所は見世物小屋の「赤猫座」。
そこでは想像を超えるツライ出来事の連続…という物語。
では、登場人物とともに、もう少し内容を覗いてみましょう。
※ネタバレ注意です!

悲しき運命の少女か、意外と腹黒か?主人公【みどりちゃん】

親を亡くした孤独な少女みどりちゃん、13歳。
見世物小屋では奴隷のように扱われたり、両手を失くした男に犯されたり。
唯一の心の拠り所の子犬まで奪われる始末。
いつも見世物小屋の仲間に虐められていますが、赤猫座に突然現れた謎幻術師「ワンダー正光」と出会いで見世物小屋での立場が逆転します。

今まで弱い女の子だったみどりちゃんがすぐに偉そうになるところなんて、本当は性格悪いんじゃないの!?とギャップについていけません。
その後も自分の立場向上のためには大切な人もすぐに切ろうとする、したたかさも炸裂。
本当は一番怖いのはみどりちゃんかも知れません。

ちなみに、みどりちゃんをイメージした曲の内容から「エヴァンゲリオンの綾波レイ」が作られたというのは有名な話。
寡黙で何も語らないけれど自分は曲げない。
その精神は綾波レイに受け継がれているようです。

みどりちゃんを本当に愛している?幻術士【ワンダー正光】

摩訶不思議な西洋魔術を扱う幻術士ワンダー正光は赤猫座に現れ、すぐに見世物小屋のトップスターとなります。
そんなワンダー正光が愛したのがみどりちゃん。
稼ぎ頭のワンダー正光が大切な赤猫座の親方は二人を特別扱いして、他の仲間は面白くないという展開に。

ワンダー正光は、普段は温厚な人物ですが、怒りの地雷を踏むと何をしでかすか分からないサイコパスな人物。
しかし、それもみどりちゃんを愛するがゆえの行動なのですが、実は自分の思い通りにならないとキレまくる、権力を振り回す自己中心的なタイプではないのかと思います。
ココにも人間のエゴが垣間見え、人は見かけだけでは分からない…そんな思いが脳裏をよぎります。

イジワルなのにナゼか憎めない!【見世物小屋の仲間たち】

舞台となる見世物小屋「赤猫座」には個性的な人物がたくさん登場します。

・両腕を失った包帯男「徳利児鞭棄」:
みどりちゃんのことが好きですが素直に表現できません。
(少女椿が好きな人の中でコスプレをする人やファンが一番多い人気者)

・見た目は女、中身は男「カナブン」:
赤猫座の親方の色子(セフレのような感じ)でもある男の子。残虐で歪んだ性格ですが、本当は愛されることを知らずに生きてきた子なのかもと思えます。

・どの男とも寝る「蛇女紅悦」:
女を売りにして生き抜いているタイプ。みどりちゃんに辛く当たりますが、面倒見がよく助けてくれる人情的な一面も。

見世物小屋の仲間は、最初はみどりちゃんを虐めるので憎らしく感じますが、物語が進んでいくとみんなの闇が悩みが見えてきて、本当に悪い奴らではないのかも、と考えさせられます。
コンプレックスを抱えて必死で生きているのが伝わってきます。

「少女椿」みどりちゃんは何処へ行く?幸せになれる?

不幸の全てを背負ったようなみどりちゃんですが、彼女もなかなかの頑固者です。
物語はみどりちゃんが幸せになりたくてもがいているうちに、エンディングに向かいます。
見世物小屋や仲間たちはどうなるのか、ワンダー正光とみどりちゃんは一緒になるのか、そしてハッピーエンドになるのか…
みどりちゃんだけでなく、それぞれが背負っている生い立ちや身体のこと、将来のことやコンプレックスなどが渦巻く世界。
グロテスクな描写や表現に目が行きがちですが、実は自分にも置き換えられる悩みばかりだという事に気が付かされます。
美しい絵に描かれる人間のエゴ。
「少女椿」は人生そのものを包み隠さず描いてくれているのではないでしょうか。
一度見てしまったら、「少女椿」の世界観にハマってしまう中毒者も多い作品。
ぜひ人の心の奥をエグるこの作品の世界を覗いて見てください。

【少女椿】昔は本当にこんな世の中だったのかな…

「少女椿」を初めて見た時の衝撃は忘れられません。
ただ悲しい、儚いだけでないグロさもツボで、すっかり見入ってしまいました。
作者の「丸尾末広」さんは、「楳図かずお」さんを尊敬している漫画家の一人。
あたらめて「楳図かずお」さんの偉大さも感じました。
ちなみに、ちびまる子ちゃんに登場する「丸尾末男」は丸尾さんが由来。
「少女椿」の丸尾さんもまた、後輩の漫画家の憧れであるんですね。